冬コミ原稿でボロボロになっていたために遅れました。
目次
病葉(わくらば)と申します。
技術同人誌そのものの存在を知って約2年、作り始めて1年半、商業誌デビューをして1ヶ月になります。
記事のテーマ
個人でもグループでも合同誌を書いており、ちょこっと参加したものも含めると技術同人誌を6冊作ってきました。
右から順に参加した同人誌を並べています(技術季報を除く) |
書く側の楽しさ(そして苦しさ)を記事のネタにすることもいつか出来そうですが、今回は買う側の話をします。
私は本を読む時間を意識的に取っていないにも拘らず本を買ってしまう病気に罹っています。部屋には技術同人誌の山。
買う量は、出来る限り抑えている。そう思っていましたが、良い機会なので現実と向き合うことにしました。ついでに、手元にある技術同人誌の簡単な統計を取って記事にしようと思い立ちました。
ということで、技術同人誌の山を引きずり下ろした画がこちら。
読めてない本が多い… |
分析対象データについて
本の山を崩しながらスプレッドシートに入力したデータが、分析対象データの元ネタです。ということは当然、分析対象は私が購入した本のみとなっています。
他にもデータにバイアスが掛かりそうな情報を挙げておきます。
本の購入傾向(私自身の特徴)
- 「ここじゃないと絶対買えない」切り口の本が大好物
- 不得手な分野:Web(特にフロントエンド)、低レイヤ
- 好きな分野:Linux、Shell Script、Redmine
本の購入ルート
- 技術書典
- コミックマーケット
- COMIC ZIN
分析対象の基準
- 個人またはグループが頒布した技術同人誌が対象
(ただし電子版で買った本は対象外) - コア技術が無くても、エンジニアリングに関係していれば対象
- 自分の本は対象外
- 企業有志で作成したものは基本対象外(1つだけ例外あり)
上記の条件の下、入力したシートは以下のようになりました。
ページ数や印刷所、キーワードだけで、誰のデータか分かる人には分かってしまう |
合計55冊となりました。電子版を入れるともっとデータが増えてしまう...恐ろしい。
分析結果
分析と書くと何とも大仰な感じがしますが、フィルタなどしながら全体を眺めて気づいたことを観点ごとに分けて書いていきます。
【ページ数】
スプレッドシートの図ではページ数が多い順にソートした状態にしています。全体で55件に対して100p超えが13件。
このうち合同誌が3件、単著が10件ありました。
技術同人誌は一般の同人誌よりページ数が多く、
ページ数が多くても敬遠されにくい傾向があると言われています。
理由としては、
(1)あまりにページ数が少ないと、よほど切り口が斬新でない限り
「ググれば出てくる内容なのでは」と思われてしまう
(2)ページ数が多いと「体系的に纏まっていて内容が濃い本なのでは」と思われる
(3)エンジニア向けの商業本は技術同人誌よりも高いため、
「ページ数の割にむしろ安い」と思われる
などが挙げられます。
右に行き過ぎると分布が増えるあたりが如何にも技術同人誌 |
【本のサイズ】
本のサイズはB5、A5、その他の3種類で分類しました。
一番多かったのはB5サイズでちょうど6割。
本を作る時にA5版・B5版のどちらにするか迷うことがありますが、
”必ずA5版で作る”という人はあまり居ないようです。
A=A5版、B=B5版、C=その他 |
【印刷所】
今回調べて初めて分かったのですが、奥付に印刷所を書いていない本が思いの外多くてびっくりしました。ねこのしっぽと日光企画が二大勢力。これはどちらとも技術書典に協賛しているのが大きく影響していると思われます。
ねこのしっぽと(不明)の件数が並ぶとは思わなかった |
【発行年】
私が技術同人誌を知って約2年なので2016年以前の本が少ないのは当然ではありますが、それでも2018年に買った本が多かった。技術書典4、技術書典5の影響であることは間違いないでしょう。
2018年のデータにまだ冬コミ分のデータが入っていないことにお気づきだろうか... |
私の好きな技術同人誌
データばっかり続きましたが...面白いですか?
既に技術同人誌を書いてる方や書こうと考えている方にはもしかしたら参考になるかも知れませんが、やっぱり具体的なサンプルがあった方が良いかなと思います。
ここでは「これぞ技術同人誌!」と思う本を10冊ご紹介します。
ここでは「これぞ技術同人誌!」と思う本を10冊ご紹介します。
技術書典がとあるメディアに取り上げられた際に紹介された本の一つです。表紙の分かる人には分かる感がたまりません。SE用語と銘打ってるだけあって単語のチョイスが絶妙で、尚かつ単語の解説もかなり洗練されています。持っておいて損はありません。
(作者:みじんこ組 さん)
(作者:みじんこ組 さん)
このタイミングでパンチカードに着目した時点でもう勝ちだと思います。しかも、別の同人誌の下調べをするまで存在すら知らなかったという状態から実物を作って本を書き上げたという凄い方。表紙の色味で分かるかもしれませんが、理解の助けとして随所にガルパンネタを織り交ぜています。
(作者:竜睛舎 さん)
(作者:竜睛舎 さん)
Raspberry piで同人即売会特化型デジタルサイネージを作ってサークルスペースの限られた空間を500%活用するはなし。
この本はタイトルがキャッチーな上に、頒布会場で実際にデジタルサイネージの展示を行っていました。本のテーマの説明とマーケティングと展示が全て一体となっている素晴らしいプレゼンでした。イラストとシステムの簡易構成図が一体になっている表紙も凄いです。
(作者:Yuki Ichinomiya さん)
(作者:Yuki Ichinomiya さん)
DAISY,Give me Your Alternative Book
音声図書フォーマット「DAISY」に対応する本を作成する一連の流れを解説する本。本書自身もそのプロセスを経て作成されています。作者自身DAISY対応の本がいずれ必要になるという状況下にあり、「無いなら作ればいいじゃない」精神を体現しています。
(作者:ほしがたタイムカプセル さん)
jQueryだって複雑なアプリ作れるもん!
高機能ながら学習コストが高いと言われる各種Webフレームワークの代わりに、相対的に学習コストの低いjQueryでカバー可能な範囲はjQueryを使い倒そうという方針を、豊富なサンプルと共に解説している熱い本です。Web、特にフロントエンドが不得手な(というか触れる機会が無い)私にとってjQueryがギリギリなので、これから勉強するべく購入しました。会場で買うとカバーが貰えました。凄い。
(作者:カウプラン機関極東支部 さん)
FitbitのClock Faceを作ろう
スマートウォッチの中でもまだ名が知れているか微妙なFitbitですが、Webで自作できるFitbitの時刻表示アプリ(Clock Face)を作成するための本です。私自身使っているスマートウォッチをPebble Time RoundからFitbit Versaに移行しており、いつかこのニッチなテーマで
同人誌を作ろうと思っていたので正直「やられた…!」という思いでした。この本の知恵をありがたく拝借して作ってみようと思います。
(作者:sakebook さん)
(作者:sakebook さん)
Shell Scriptライトクックブック2014-2016
ソフトウェアの維持管理の負担を最小限にするべく、"どこでも動き、どの時代でも動く"コードを書くべく筆者が提唱しているPOSIX原理主義。その具体的な使用例を紹介している本。例を実際に使わないまでも、どのような思考プロセスを経てコードに至ったかをしっかり解説している良本だと思います。
(作者:リッチ・ミカン さん)
徹底練習!アカデミックプレゼンテーション
学会でのプレゼンテーション(アカデミックプレゼンテーション)を主軸として、筆者の心構えと具体的な方法論が書かれた技術同人誌です。「とにかく練習しろ」と口で言うのは簡単ですが、具体的なやり方や実例を紹介し、発表前日や当日の振る舞いまで書いてある本は他には無いでしょう。プレゼンの指南でよく目にする矛盾した教えをキッチリ指摘している箇所は痛快無比です。
(作者:暗黙の型宣言 さん)
日経電子の本
技術書典4の会場で無料頒布された日経電子の本。日経電子版の開発や運用を通して得られた知識や記事を、A2サイズの紙面に収めた力作です。「これは本なのか?」と思った方も居るかもしれませんが、編集後記の中に『(中略)読み応えのある一冊になったのではないか』という記述があるので紛れもなく本です。
(作者:Nikkei Engineer Team さん)
Effective 肉の多重性測定
インパクト抜群の表紙、そしてニッチすぎるテーマ。これを技術同人誌と言わずして何と言う。私が把握した本書の内容は、”肉の多汁性(ジューシーさ)を客観的に評価するための指標について論じ、そしてその指標を用いて最適な低温調理法を考察した本”です。シリーズ3冊目の本で、本の冒頭にFAQとして「これは何か」と「なぜ」がしっかり書いてあります。
(作者:naotaco さん)
以上、私が好きな技術同人誌10冊をご紹介しました。
「そんな本があったのか!」と思ったあなた。今度は是非技術書典やコミケ、または技術同人誌の委託販売を行っている書店に足を運んでみて下さい。
P.S. 技術同人誌の山を片付けたつもりでしたが、少し形の変わった別の山が出来上がってしまいました
以上、私が好きな技術同人誌10冊をご紹介しました。
「そんな本があったのか!」と思ったあなた。今度は是非技術書典やコミケ、または技術同人誌の委託販売を行っている書店に足を運んでみて下さい。
P.S. 技術同人誌の山を片付けたつもりでしたが、少し形の変わった別の山が出来上がってしまいました